明けましておめでとうございます。新年も宜しくお願いいたします。
昨年をふり返ると、様々な思いが去来します。その中で大きかったのは、言うまでもなくコロナ禍の日々でした。
1月23日の木曜日は、通っていた外国語大学の中国語講座の最終日でした。その際、講師で北京出身の飯島先生から聞いたのは、「話題になっている中国起源の新型ウィルスは言われているよりも深刻」で、「武漢では重症患者が増えている。これまで中国当局はコロナを軽視していたが、こうした感染症の権威である医師が、習政権にメールを送り続け、当局もようやく重い腰を上げた」という意外な話でした。確かに、年末から新型ウィルスのことはニュースになっていましたが、人から人への感染もはっきりしませんでした。それを聞いて受講生の方たちと、「軽くはないんだね」と今後を心配したものです。
それからは、あれよあれよ、という形で日本にもまた世界にもコロナが広まりましたね。高齢者が重症化するという話に命の危険を感じた私は、感染症の本を読んだり、テレビのモーニングショーやNHKスペシャルの感染症特集をかなり視聴する時間が長かったと思います。ドイツのマールブルクにあるウィルス学研究所に学んだ岡田晴恵氏の本※1など、啓蒙的で役に立ちました。それにしても、明治人の北里柴三郎は偉大でしたね。
旅好きの私が海外行きを諦めねばならなかったのは、残念でした。2月に夏の欧州行きを予約し、春までにはそれをキャンセルする始末でした。そのキャンセルでの返金が帰って来たのは、ようやく10月。半年もかかってしまいました。
7月でしたか、我が家に大勢のお客さん。娘の大学の同期生たち9人がバーベキューをするとのことで、昼の時間にやって来ました。実はこの後、蜂が飛んでいたそうで、皆屋内に一時避難。おかげで居間はぎゅうぎゅう詰めになりました。これまでの来訪者としては、最多のグループでした・・・。
東京の郊外に住む身なので、都心の新宿区などの感染者が1000人を超える事態になっても、在住の市では未だにその数は百人を超えません。ところが、11月初め、その新宿区との往復を繰り返していた家族の者が、コロナに感染しました。発熱もそして味覚障害などもあったと言います。ちょうどGO TO キャンペーンを利用して久しぶりに日光へ夫婦旅行に出かけ帰って来た時でした。まずは濃厚接触者として保健所の駐車場で唾液を2cc採り、翌日には夫婦共に陰性との連絡を受けました。勤め先などに迷惑をかけなかったことが何よりです。しかし、その後半月、外出等は控えて今後の発症に備えて下さいと言われ、不自由な日々を過ごすことになりました。
そして年の瀬、コロナ感染者はうなぎのぼり。慣れもあり、当初ほどの危機感は持てませんが、さりとてこの勢いではコロナの波はひたひたと足元へとやって来ています。百年ぶりの感染症のパンデミックに、わが身と言えば、楽観と悲観を交差させています。
GO TOで出かけた日光の中禅寺湖畔、イタリア大使館別荘跡から見た男体山。雲がきれい。この日、奥日光で宿泊。
ところで、日光に出かけた11月6日の夜、ホテルに持参のパソコンで閲覧したのは、アメリカ大統領選の詳細な開票結果でした。この日丁度、激戦州と呼ばれるミシガン湖周辺の幾つかの州とペンシルヴェニアとが民主党のバイデン候補に逆転され、トランプの敗北が見えて来た時でした。昨年中私の心を占めていたのは、この大統領選挙でトランプが再選されるか否かでした。その帰趨は地球大の問題を考える時、大変重要な転機だと思っていたのです。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、トランプがとった政策と言ったら、この四年ろくなことがありませんでした。温暖化はないと言ってパリ協定を離脱するは、ラスベガスやフロリダなどで銃による大量殺人が行われても銃規制などしないと言ったり、黒人による抗議運動が起きれば連邦軍による鎮圧を叫んだり。極めつけは「コロナなんて風邪。消えてなくなる」という3月の発言。私には世界で最も責任ある国の代表が、地球を滅亡させる張本人になるのではと危惧していました。ようやく大統領選での敗北で、こうした危機が去るのでは?と思えるようになりました。
ところがです。選挙の敗北後も、「投票は盗まれた!」とツイッターで流すトランプ派のフェイクを信じ広める多くのアメリカ国民がいます。さらに不思議なのは、日本の右派勢力の中にこれをコピーして広める人たちまでいることです。失笑に絶えない、子供だましと言えるフェイクを真顔で信じる人々。SNS上で嘘をまき散らす人々。これは私には、言い広める悪人がいるだけでなく、他人の主張を何の疑いもなく信じる人が如何に多いかという恐ろしい現実を見せられていると感じます。とんでもない時代に生きていると。「嘘も百遍言えば真実となる」と豪語したヒトラーの時代に逆戻りしないことを願うばかりです。
(元旦に届いた高校時代の友が書いた賀状に触発され、これを追加しました。)
昨年のご挨拶で、我が家に隣接する緑地が消えようとしているとお伝えしました。これもコロナのせいで事の進展が遅く、地主は伐採をすると通知して来ましたが、未だに武蔵野の緑が残る雑木林は伐採に至っていません。結局、今年も落ち葉の処理に勤しんでいます。しかし、近所の人がもたらした話では、この緑地には40棟の住宅が建つ予定だとか・・・。今年中に景色ががらりと変わり、緑ももう見納めとなるでしょう。
我が家のささやかな良き話題と言えば、昨年から加入した市内のエネルギー問題を考えるNPOから提案され、二階ベランダに畳3枚弱の面積をもつソーラーパネルを設置し、発電を始めたことです。バッテリーやインバーターを揃え、夏にはエアコン、冬にはガスヒーターの電源などに利用し始めています。10年前、中古住宅をリフォームしてその家の寿命をさらに伸ばした我が家ですが、できればこうした省エネ・創エネの環境への負荷の少ない改築を夢見ています。その時は、屋根上にソーラーパネルが敷き詰められ、こだわっている太陽熱温水器も設置されるでしょう。
2階のベランダに置いて固定したソーラー(太陽光)パネル 南側に道路があるので採光は良好です
家族はと言えば、神戸の貿易関係の会社に勤める長男は、月一で東京に帰って来ます。来る度に女友達とあっているそう。長女の方は、何とかして今春には大学を卒業してもらいたいのですが、学業よりはバイトと遊びに夢中。9月に自動車免許を取って以来、我が家の車を借り出して遠出を繰り返し、遊びまわっています。そして妻の懸念は、今年90歳を超えている実母の様態。先月、何度目かの入院騒ぎがあり、今は点滴を受けながら命を繋いでいる有様です。しかもコロナのために面会もままならず、悩ましい限りです。そして私はと言えば、コロナで自宅にこもりがちで、読書やこのホームページ造りが進むと思いきや、どうもシャキッとしない日々を送っています。旅も何十年ぶりの日光へ一泊で行った以外は、二ヵ月に一遍のペースで山とを往復(大体、日帰り)する程度。これで健康面で不安があれば困りものですが、歯科医には通っていますが、その他は問題ないようです。検診を受けても、コレステロールや血圧が若干高めなだけで、特に治療の要はないと、世話になっている内科医から言われたばかりです。
さて、今年はどんな年になるのでしょうか?コロナは収束するのでしょうか?ドイツ在住の熊谷徹氏によれば、ベルリンのロベルト・コッホ研究所が近未来のパンデミックを予想し2013年1月発表したシミュレーションでは、終息には概ね3年かかりその間3回の波が来るとシナリオを描いていたそうです※2。SARSの変種を想定など条件は違いますが、一つの参考になるでしょう。もちろん3年と言わず一年半で終わってくれたら何よりです。ワクチンが配られたら躊躇なく注射するつもりですが、この冬が去った頃にコロナ消滅の希望が見えてくるのでしょうか?早期の撲滅を願うばかりです。そうでないと、旅にも安心して出かけられません。皆様もくれぐれもご自愛のほどを・・・。あらためて、今年も宜しくお願いします。
2021(令和3)年 正月 元旦
※1 岡田氏の著書『人類vs感染症』(岩波ジュニア新書)には、冒頭、マールブルクの聖エリザベトのライ患者救済のことが書かれています。マールブルクについては、このサイト「旅する編集人⑦のそのⅡ」に紹介があります。
※2 熊谷氏の著書『パンデミックが露わにした「国のかたち」』(NHK出版新書)によります。